名古屋市の取り組み
① 中部圏における水素サプライチェーン構築に向けた広域連携
中部圏の自治体や経済団体、産業界等で構成する「中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議」では、中部圏における2050年までのカーボンニュートラル実現のため、新たなエネルギー資源として期待される水素とアンモニアの双方を、世界に先駆けて一体的かつ大規模に社会実装することを目指し、方向性を以下のとおり定めており、構成員として本市もその実現に向けた取り組みを進めています。
- 地域住民等の理解のもと、サプライチェーン構築と需要創出を両輪として推進する。
- サプライチェーン構築では、水素・アンモニアの調達や需要、供給の規模や方法、CO2排出量、更には社会情勢等を鑑みた地域で活用する共用インフラとして、産業界とともに推進する。
- 需要創出では、未だ限定的な利用に留まる水素・アンモニアについて利用拡大や新たな用途展開を図るため、先進的な利活用モデルの普及促進や設備導入支援等を中部圏内事業者等に対して推進する。
- 技術的、資金的な課題解決だけでなく、事業者や一般の方向けの普及啓発により水素やアンモニアに関する理解の向上も図り、社会受容性を高めていく。
② 名古屋港におけるカーボンニュートラルポート形成の促進
日本一の取扱貨物量を誇る名古屋港には周辺地域に多くの産業が立地しており、水素をはじめとする次世代エネルギーの導入による二酸化炭素排出量削減に大きなポテンシャルがあります。また、次世代エネルギーのサプライチェーンでは、輸入・貯蔵において重要な役割を果たすことが見込まれています。
こうした中、2022年5月には、本市と愛知県を母体とする名古屋港管理組合が、名古屋港におけるカーボンニュートラルポート(Carbon Neutral Port、以下「CNP」)形成に向けた検討や、水素に関連した民間事業者の取り組みを踏まえた「名古屋港水素利活用に向けた基本方針」を策定しました。
また2023年3月には、本市を含む行政や民間事業者が参画する「名古屋港カーボンニュートラルポート形成協議会」により、「名古屋港カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画」が策定され、荷役機械や輸送トラックに対する水素エネルギーの利活用に関する調査検討をはじめ、CNPの形成に向けた取り組みが進められています。
本市は、持続的な発展を実現する上で必要不可欠となるカーボンニュートラルに適応した産業構造への変革に向け、水素の輸入・貯蔵・輸送機能を有したサプライチェーンの構築や産業集積による水素需要の創出を実現する「名古屋港カーボンニュートラルポート形成協議会」の構成員として、関係者と共に、本市もその実現に向けた取り組みを進めています。
③ 脱炭素先行地域における水素の利活用
名古屋市では、国の「脱炭素先行地域」に選定された「みなとアクルス」の開発事業において、2030年度までに民生部門における電力消費に伴うCO2排出実質ゼロを目指すとともに、地域課題解決に取り組む脱炭素型まちづくりを、民間事業者と共に実施しています。
脱炭素化に向けた取り組みのひとつとして、水素を新たなエネルギー源とした取り組みを推進します。地域内にある水素ステーションにおいて、太陽光発電電力や市のごみ焼却工場で発電した電力の余剰分を使用して水素を製造することを計画しています。製造した水素は燃料電池自動車に供給するとともに、水素混焼コージェネレーションシステムや水素燃料電池など水素利用設備で発電した電力を地域内で活用する予定です。
「再開発地区で実現する脱炭素コンパクトシティモデル」となることを目指す街づくりのなかで先進的な水素利活用の社会実装にチャレンジします。
④ 企業向け利活用促進
水素の利活用は、一足飛びの脱炭素化が困難な分野において有効な手段とされており、カーボンニュートラルに向けた取り組みが求められている市内中小企業等においても有効な選択肢の1つとなります。
本市は地元経済団体とも連携し、市内中小企業等が当地域の水素社会実装において取り残されることがないよう、メッセナゴヤをはじめとする展示会の機会を活用して、本市における潜在需要の掘り起こし等を目的とする展示やセミナーの実施を通じて、水素エネルギーの普及促進事業を実施します。
⑤ 水素モビリティの利活用促進
市役所における燃料電池自動車の導入と啓発事業への利用
燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle、以下「FCV」)は、水素と空気中の酸素の化学反応によって発生した電気でモーターを回して走るため、走行時に二酸化炭素や大気汚染物質を排出しないゼロエミッション車です。また、FCVから大容量の電気を供給することができるため、災害による停電時には応急電源として使用することができます。
本市は全国の自治体に先駆けて2003年度にFCVを導入し、2019年度には各区役所に1台ずつ、計16台のFCVを導入するなど、公用車へのFCV導入を進めており、2023年4月1日時点で計20台のFCVを導入しています。
また、バスについては2022年度に燃料電池バス1台を市バスに試行導入し、2023年4月から運行を開始しました。さらに、2023年度中に燃料電池マイクロバス1台を導入し、ポッカレモン消防音楽隊車両として活用するほか、燃料電池バス1台をなごや観光ルートバス「メーグル」に導入し、2024年度からの運行を予定しています。
FCV導入支援
本市では、FCVを導入する個人(市民)に対して、補助を実施しているほか、市内に事業所を有する中小企業等に対しても、買替補助や融資といった支援を実施しています。